根府川の海と不在の車椅子

12時17分根府川駅到着した。
茅ヶ崎の踏切で緊急停止し3分程のタイムロスがあったにも関わらず、完璧に予定通りに到着した。JR職員の恐ろしいまでに完璧な仕事振りにただ驚くばかりである。

そしてもう一つ驚いた事がある。
小田原で車椅子にスーツを一つとボストンバッグらしきものを載せて電車に乗り込んできたアジア人家族がいた。
漢字の国の人である事は車椅子付いてるシールとヨーロッパ旅行という意味の漢字の書いてある、荷物を車椅子に固定させてある、帯状のロープの用なもので分かる。
驚いた事に根府川駅から美しい海が見えだした頃には、車椅子を放ったらかしにして5メートルくらい離れた座席に三々五々と座りだしていたのである。
日本なら荷物から目を離しても大丈夫だと思ったのだろうか?

最後の一人である、うら若きアジア人の女性が車椅子の、側を離れる時に少しだけ不安そうに車椅子の方を見ながら去って行ったのが印象的だった。

根府川の海と不在の車椅子、美と不可思議の同居に私の胸の内は奇妙な感動にざわついたのであった。

そして、日本の安全性を信じ切っているであろうアジア人の中年の女性が、帽子とサングラスとマスクで何かから自分をもの凄く守っている姿にも何やらざわつくものを感じずにはいられなかった。